病院見学

なんと病院見学の機会を得ました。これは普通では起こりえないことなのですが、人の縁に恵まれ、バンクーバーの病院のERを見学させていただくことになりました。カナダは医師不足が問題で、そのためにシステムをかなり効率化しています。またかなりきっちりワークライフバランスを重視するため、「医者の頑張りでグレーな部分をカバー」のような日本的なところは全くありません。そのため海外からの医師を募集はしているのですが、問題は英語力。求められる英語力は高く、そう簡単ではありません。簡単に言えば「英語を話せる」医者を募集しているということでしょうか。医師不足のため、専門医紹介は3か月、6か月、場合によっては1年待ちということもあり、患者さんにやや負担を強いているというところもあります。開業医レベルではレントゲン、血液検査は別施設に行くことになりますし、足痛いのにレントゲン撮りに10分歩くんかい?っていうイベントはざらです。

今回は当然医師として派遣されたわけではないので、当然医療行為はできないのですが、医療システムから研修医の生活まで何もかも違うことに驚きました。

まず、ERがでかい。病院の数が少ないのでERめちゃでかいです。ZONEに分かれていて、重症、中等症・軽症、隔離必要な感染症、小児、精神科系となっていました。そして研修医がいません。日本の感覚では若いうちは経験>生活という部分もありますが、こちらは全くですね。シニアの医師が3人くらいで見てますが、こういう状況なので必然的にえげつない数の患者が来ます。それを回すべく、問診もそこそこにバンバン検査ぶち込んでいきます。時にはNsが診察前にすでに血液検査とかをオーダーしています(病院によってはCTまで認められるらしい)。めまいとちょっとした発熱と軽い頻脈できたご老人に、いきなり造影でCT行ったのはかなり衝撃でした。結果的にはCTで病変がわかったのでよかったんですが、外れる可能性の方が高いストラテジーなので外れたらどうするんだろうと思いました。専門医のハードルは高く、眼科、産婦人科も救急医が初療をします。ほぼ確実に異所性妊娠のパターンで腹水出ててもバイタルが安定していたら「明日」来てねとなります。こわい。あとほんとに血液培養はとらないですね。重症っぽい(結果的にはそこまでではなかった)外傷が来たときに挿管後すぐにプロポフォールを始めたのも結構びっくりでした。少量ですがFAST陽性だったので僕だったらCTとるまでプロポフォールは怖くて使えないなと、あと鎮痛はハイドロモルフォンでこれもフェンタニルより血圧下がる印象なので私だったら使いづらいように思いました。FACTの読影はしに行かない代わりに放射線科のレポートが30分くらいで出ます。これは良しあしで、確実な読影なのですが、画像自体を確認していないケースも多く、そもそも元画像はカルテとは別画面で見ないといけないので読影力の低下につながるのではと少し危惧しました。ほんとにいろいろなことが違い、面白かったです。奇跡的なめぐり合わせて今回の見学の機会を得ました。人生何があるかわからんですね。ERのスタッフステーションでシャドーイングしていると、当然ですが完全な英語環境であり、だいたい7-8割くらいはわかるんですが、それ以上はわからず、またスピードに合わせてしゃべれないのがほんとにつらかったですね。あのスピードについていってしゃべるのは並大抵ではありません。